『ボヘミアン・ラプソディ』12の小ネタ/考察 ネタバレ有

クイーンのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの人生を描いた伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒット中。知ると更に楽しめる小ネタや考察集!

始まりのファンファーレ

20世紀フォックスの始まりのファンファーレ。この会社の映画ではお決まりだけど、なんと『ボヘミアン・ラプソディ』ではクイーンのオリジナル・メンバーであるブライアン・メイとロジャー・テイラーが演奏した特別バージョンから始まる。観客は初めからクイーン漬けにされるのだ。

この2人は役者がリアルに演技できるよう指導し、音楽プロデューサーも務め、がっつり制作に関わっている。ちなみに「フレディの声以外でクイーンの曲を演奏するのは考えられない」と発言したベーシストのジョン・ディーコンは、すでに音楽業界から引退しているため、現在はこの2人でクイーンの活動を続けている。

電子工学科の功績

作中で弄られていた通り、ジョン・ディーコンは電子工学科の博士号を持っている。クイーンのサウンドに与えた影響も大きく、ブライアン・メイは彼が作成したディーキー・アンプと呼ばれるオリジナルのアンプを使っていた。

メイが作中でも使用していたギターは、レッド・スペシャルという彼とその父親が5年以上の歳月をかけて作ったものであり、ディーキー・アンプと組み合わせることで、ヴァイオリンのような音を始めとする様々な音が出せた。そのため初期のアルバムには「No Synthesizers(シンセサイザーではありません)」という注意書きが入れられていた。

女装のMV

作中で再現され、アメリカ人からの批判につながったクイーンのメンバーが女装するMVがこちら。

ライブでもフレディはプロモーションビデオのように女装して歌うこともあった。しかし「自由への賛歌」としていた国々の観客からの評判は思わしくなく、これを見た観客に石を投げられ、即座に女装を脱いだというエピソードも残っている。

引用:Wikipedia

という強烈な個性を持った曲で、曲とミュージック・クリップのギャップが批判を生んでしまったようだ。

フレディは日本好き

お気づきになった方も多いだろう。フレディの寝巻きは着物で、部屋に伊万里焼の皿なんかも置いてあった。フレディ・マーキュリーは日本好きだったのだ。ソロ活動の際にはオペラ歌手モンセラート・カバリエとコラボしたアルバムで、歌詞が日本語の曲をリリースしている。

なお2019年1月8日現在、『ボヘミアン・ラプソディ』の日本興業収入は、本国イギリスを超え世界一となっている。相思相愛だ。

スマイルの音源

クイーンの前身となったバンドが、冒頭に少しだけ登場するスマイルだ。あのライブシーンで使われているのは、『ボヘミアン・ラプソディ』のためにオリジナルメンバーであるティム・スタッフェルを呼び寄せて録られた音源なのだ。まさかの約50年ぶりの録音である。

ライブ・エイドの再現度

実際のライブ・エイドの映像を見てもらえればわかることなのだが、本編の再現度は凄まじい。母親にキスを贈る瞬間まで同じなのだ。ブライアン・メイはアンプからピアノの上のコーラのカップまで当時と同じだったと発言している。よく見ればクイーンの前に出番だったU2の旗を掲げるファンが映っている。

ライブ・エイドは省略版

なお実際のライブ・エイドでは6曲が演奏されているため Crazy Little Thing Called Love / We Will Rock You の2曲は省略されている。この省略はそれまでのシーンでこれらの楽曲が使われたためであると、プロデューサーのグレアム・キングが発言した。

なお完全再現版は撮影されており、ブライアン・メイを演じたグウィリム・リーは「たぶん近いうちに観られる」としている。もしかするとDVDやBluray版にはフルで収録されるのかもしれない。

ヴィレッジ・ピープル

パーティーのシーンで、ロジャーがフレディに「ヴィレッジ・ピープルみたいな格好だな」と言う。これは西城秀樹がカバーした「YMCA」を歌うグループで、ゲイをターゲットにしていたことが特徴だった。ゲイのイメージを表面に出した初めてのポップス・グループとされており、全員がゲイに受けの良い職業のコスプレをしている。「YMCA」はゲイを指すスラングであり、この曲もゲイのことを歌っている。

アイム・イン・ラブ・ウィズ・マイ・カー

劇中でロジャーが何度もいじられていた車の曲がこちら。音源では最後に車のエンジン音が入るのだけど、それもロジャーの愛車であるアルファロメオの音を録音して作られている。好きだったんだな、車。ラジオにフレディがゲスト出演するシーンでネタにされているように、「ボヘミアン・ラプソディ」のB面だった。

プロデューサーのオマージュ

レイ・フォスターという架空のEMIの重役が登場し、「ボヘミアン・ラプソディ」のシングル・カットを阻止しようとする場面がある。あのシーンで彼は「アイム・イン・ラブ・ウィズ・マイ・カー」なら若者が車で頭を振りながら聴けると言うのだが、これがオマージュになっている。

重役を演じたマイク・マイヤーズは映画『ウェインズ・ワールド』で、「ボヘミアン・ラプソディ」を聴きながら頭を振る役を演じているのだ。これはマイクの強い希望で実現したシーンであり、監督は別の曲を推していたところを「ボヘミアン・ラプソディ」でなければ主演を降りるとまで言って通したとか。劇中のクイーンと被る行動で、オマージュするのにふさわしい。

狂気

レイ・フォスターは架空の存在だが、クイーンがレコード会社などから圧力をかけられていたことは本当のようだ。いわばレイはそういったイギリス音楽業界の権威を表す存在なのだ。当時の「ボヘミアン・ラプソディ」を取り巻く状況に対する疑念が込められたシーンがある。

それは空気の読めないマイアミ・ビーチが、レイ・フォスターに『「狂気」を担当されたのですか?』と問いかけるシーン。ゴールド・ディスクを受賞したピンク・フロイドのアルバム「狂気」を表彰した額が壁に飾られていたのだ。一瞬気まずそうな顔をするレイ・フォスター。ピンク・フロイドは70年代に世界を席巻したイギリスのバンドで、ジャンルの特性上3分を超える楽曲が多い。

このアルバムからシングルカットされた「マネー」は、6:32の曲でありレイ・フォスターの論理に当てはまらないのだ。そして「狂気」はイギリス出身アーティストの作としては最も売れたアルバムとなった。一節にはマイケル・ジャクソンの「スリラー」に次ぐ、2番目の売上を誇るアルバムと言われている。アメリカのヒットチャートであるBillboard 200に741週連続で、15年間もランクインしていたというのだから、そのセールス的成功は疑う余地もない。

そんな偉大な祖国の先輩がいながらも、「ボヘミアン・ラプソディ」のシングル・カットを長いという理由で拒んでいた当時の人たちに疑問を投げかけているのが、あのマイアミの奇行なのだった。

またこのアルバムからシングルカットされた「Money」は、カネを悪と考えながらもそこから逃れられない人間の悲しさを描いた曲で、ピンク・フロイドを知る人間にとってはレイ・フォスターに対する皮肉として聞こえる。

マイアミ・ビーチ

なおマイアミは実在し、なんと映画プロデューサーとして『ボヘミアン・ラプソディ』を監修している。彼の協力もあって本作の再現度は高まっているのかもしれない。

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