女王の進撃が止まらない
今、日本ではクイーンの一大ムーブメントが起こりつつある。ラジオをかければフレディ・マーキュリーの声を聴かない日は無いし、映画のサントラを収録したアルバムは今月のオリコン3位につけている。それもそのはず、世界で6億ドルを超える興行収入をたたき出している本作が、クイーンの生まれたイギリス、そして韓国に次いで、3番目に観られているのが日本なのだ。
彼らの音楽を聴かない方が難しいほど、様々なCM、映画、テレビ番組でクイーンは使われてきた。その愛はクイーンがリアルタイムじゃなかった世代にまで浸透していて、映画館には若者の姿が多い。平日の昼間の回すら売り切れるのだから。ではそのヒットの秘密はどこにあるのだろうか。
史実を元に、フレディへの共感を生む
クイーンのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーは伝説を作って死んだ男だ。死んで伝説になった男ではない。本物の大スターである。しかし本作では、彼の葛藤や抱えていたコンプレックス、そして汚点に至るまでを、単なるWikipediaの情報を超えて滑らかに描き出している。その劇的な脚色を飲み込んで形作られるフレディに僕らは自分の姿を重ね、その孤独を労わり、涙する。
リアルタイム世代にも共感してもらうために、クイーンを再現した俳優陣は徹底した役作りに励んだ。楽器をプロ並みに演奏し、そしてその動作や、魂までも自分の中に落とし込んだような熱演は、観客のハートを今この瞬間も揺らしている。そしてギターのブライアン・メイに関しては、本人が太鼓判を押すほど顔も雰囲気も似ている。制作陣の愛と本気を感じずにはいられない。
クイーンと重なる映画の歩み
各サイトが紹介しているように、この映画は上手くリピーター需要を生み出した。それはほれぼれするような熱演と、そしてクイーン自体の曲の良さがあってのものだろう。1985年当時に放り込まれた観客たちは、その感動の源泉を知りたくて、何度も劇場へと足を運ぶのだ。
『ボヘミアン・ラプソディ』は、イギリスの批評家たちに強く批判されている。そしてその状況こそ、レコード会社や音楽評論家たちに叩かれ、糾弾されてきたクイーンと重なるのだ。数々の批判や圧力をはねのけ、人気で自分たちの地位を確立してきたあの4人と、名曲「ボヘミアン・ラプソディ」。この映画が彼らと同じ道を歩みつつあることで、ファンたちの応援も過熱している。
衝撃のラスト
ポピュラー音楽に教養も何もないが、しかしクイーンの名前くらい知っているべきだ。「We Will Rock You」の抜群の知名度から考えれば、日常会話の中にクイーンの名前が出てきてもおかしくないレベルだろう。見ておいて損はない。
そして本作のキャッチコピーは「ラスト21分、永遠になる」。筆者はこの21分が余りにもすごかったので、劇場に再度足を運んでしまった。あなたがあの衝撃を目撃する日を、心待ちにしている。それでは。
コメント